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2022年4月からスタートした「FIP制度」。再生可能エネルギー(再エネ)事業に関わる方なら、一度は耳にしたことがある言葉ではないでしょうか。これからの発電事業において、FIPは避けて通れない重要なキーワードです。一体どんな仕組みなのか、基礎から解説します。
FIP(フィップ)とは「Feed-in Premium(フィード・イン・プレミアム)」の略称です。簡単に言うと、発電した電気を卸電力取引所などで売った価格に対して、国が一定の補助額(プレミアム)を上乗せしてくれる制度のこと。
これまでのように「固定価格」で買い取ってもらうのではなく、自分で市場に電気を売り、そこに補助金がプラスされるイメージを持つと分かりやすいでしょう。市場価格に連動するため、経営努力次第で収益を伸ばせるチャンスがあります。
参照元:経済産業省 資源エネルギー庁|再生可能エネルギー FIT・FIP制度ガイドブック2025(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/data/kaitori/2025_fit_fip_guidebook.pdf)
これまでの主流は、決まった価格で電力を買い取ってもらえる「FIT制度」でした。しかし、再エネの普及に伴い、電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」による国民負担が増大してしまったのです。
また、再エネを主力電源として自立させるためには、いつまでも保護された環境に置くわけにはいきません。電力市場からの自立を促し、競争力のある電源へと成長させるため、市場原理を取り入れたFIPへの移行が進められているのです。
大きな違いを一言で表すと、FIT制度は「固定価格で買い取ってもらえる安心感」がある仕組み。対してFIP制度は「市場価格連動型で、工夫次第で収益が変わる」仕組みと言えます。どちらも再エネを支援する制度ですが、その中身は大きく異なります。
それぞれの価格決定の仕組みは、以下の計算式で表せます。
FIP制度の大きな特徴は、市場価格が高い時間帯に電気を売れば「売電収入+プレミアム」で、FIT以上の収益が得られる可能性がある点です。逆に市場価格が安い時は収益が下がることもありますが、プレミアムが下支えしてくれます。
発電事業者にとって大きな変化となるのが「計画値同時同量」の義務化です。これは、発電予測(計画)と実際の発電実績を一致させること。
FITでは送配電事業者がこの調整を肩代わりしてくれましたが、FIPでは発電事業者が自ら責任を負わなければなりません。もし計画と実績にズレ(インバランス)が生じた場合、「インバランス料金」というペナルティのような費用を支払うリスクが発生します。
FIP制度は、再生可能エネルギー事業に取り組む企業にとって、大きな飛躍のチャンスになる一方で、経営を揺るがすリスクも潜んでいます。事業を長期的に成功へ導くためにもFIPならではのメリットとデメリットを正しく把握し、自社に合った戦略を練りましょう。
FIP制度へ移行する最大のメリットは、電力需要の波にうまく乗ることでこれまでにないほど収益を伸ばせる可能性がある点です。例えば、冷房の利用がピークに達する夏場の昼間や、多くの人が帰宅して電気を使い始める夕方などは、電力市場での取引価格が一気に跳ね上がります。
こうした市場価格が高騰するタイミングを狙って集中的に売電できれば、FIT制度の固定単価を大きく上回る高い売電収入を得られるわけです。市場の動向をしっかり分析して発電をコントロールすれば、事業の利益率を大きく改善する道が開けるでしょう。
さらに、FIP制度では事業を展開するうえでの自由度も格段に上がります。その代表例が、再生可能エネルギー特有の「環境に優しい」という価値を証明する「非化石証書」の直接取引。脱炭素化を目指す企業へ向けて電気とセットで販売すれば、事業の新たな収入源に育つ可能性があります。
また、蓄電池システムを併設して、市場価格が安い深夜帯などに電気を貯めておき、価格が高騰した時間帯を見計らって放電するという賢い運用も選べるでしょう。状況に合わせて柔軟なビジネスモデルを描けるのは、FIPならではの大きな強みです。
魅力的なメリットがある一方で、市場価格の変動に直接さらされるため、収益が不安定になりやすい点は大きなデメリットと言えます。FIT制度のときは「毎月決まった額が安定して口座に振り込まれる」という安心感がありました。
しかしFIP制度では、気候条件や社会情勢によって電力の市場価格が暴落するリスクもゼロではありません。もし価格が安い時間帯ばかりに売電してしまうと、想定していた売上を下回る事態に陥ってしまいます。
そのため、これまで以上に緻密な資金計画を立て、価格下落時のダメージを和らげる工夫が必要です。
もう一つの懸念点は、発電所を運営するための実務が非常に複雑になることです。「明日はどれくらい発電しそうか」という精度の高い発電予測(計画値)を作成し、さらに市場での取引業務まで自分たちでこなさなければなりません。
万が一、予測と実際の発電量にズレが生じると、「インバランス料金」というペナルティを支払う羽目になります。こうした高度な運用スキルを自社だけでカバーするのは難しいため、専門知識を持つ「アグリゲーター(特定卸供給事業者)」と呼ばれる代行業者へ業務を委託するのが一般的です。
その分の委託手数料やシステム導入費など、FIT時代にはなかった追加コストが発生する点には注意しておきましょう。

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