木質バイオマスのメリット・デメリットとは

このページでは、木質バイオマスにはどのようなメリット、そしてデメリットがあるかを説明しています。また、いかにデメリットを最小限にとどめて木質バイオマスを活用できるか、その方法についても解説。僕質バイオマスの導入を検討している人は、ぜひ参考にしてみてください。

メリットとデメリットについて

木質バイオマスには多くのメリットがある一方で、無視できないデメリットもあります。ただ、地球環境を大切に考える時代の潮流を考慮すると、従来型の代表的な燃料である石油などの「化石資源」のみを使用し続けるのは、やや時代遅れになりつつあると言えるかもしれません。

近年耳にする機会も多くなっている「木質バイオマス発電」。ここで、木質バイオマスについて、もういちど知識を整理して理解を深めておきましょう。良い面だけでなく、問題点についてもきちんと取り扱っていますので、木質バイオマスのことを客観的に把握するのに役立つはずです。

木質バイオマスのメリットとは?

木質バイオマスのメリットは多数あります。今回は、現在でも高い割合を占めている化石燃料による発電と比較した場合、特に明確になる、木質バイオマスが持つ2つのメリットについてみていきます。

1. 地球環境にやさしい

最初にあげるべき最大のメリットは、環境面において非常に優れていること。環境にやさしいと評価される理由は、二酸化炭素の発生量を抑えられる特性があるからなのです。

もちろん、木質燃料を燃やせば、化石燃料などと同じ用に二酸化炭素が発生し、大気中に放出されるのは確かです。しかし、総合的に考えると二酸化炭素量が増加することにはなりません。というのも、燃料として利用された木材は、成長する過程で二酸化炭素を吸収しています。そのため、燃やされた際にその二酸化炭素を排出したと考えれば、二酸化炭素の量はプラスマイナスゼロとなります。つまり、地球温暖化の原因にはなっていないのです。

2.資源の有効利用

木質バイオマスでは、基本的には廃材や未利用間伐材などをはじめとする「余った木材」が利用されます。本来であれば廃棄物となるはずだった木材を、バイオマスエネルギーとして有効利用するわけです。また、化石燃料の場合と異なり、燃料を日本国内で調達が可能。燃料として利用する木材の量を増やせば増やすほど、より充実した「循環型社会」の実現に近づくのです。

国内全体では膨大なエネルギーが必要なので、すべてを木質バイオマスで賄うのは現実的に不可能ですが、従来型の、輸入に依存した化石燃料メインのエネルギー発電の割合を少しでも低下させるための方法として、木質バイオマスのさらなる普及につとめるのは非常に有効だといえます。

3.FIT(固定価格買取制度)の対象である

国が定めているFITという制度の対象になっているため、生産した電気は、電力会社によって指定された価格で買い取ってもらえます。FITは、木質バイオマスだけでなく、さまざまな再生可能エネルギーによる発電事業を対象としていますが、木質バイオマスの場合は、比較的優遇されているのが現状です。

どの燃料を使用したか、という条件によって価格は上下するものの、例えば、太陽光発電などよりも、全般的に高い買取価格が設定されています。ちなみに、木質バイオマス発電で生産した電力を最も高い価格で買い取ってもらうには、間伐材由来の燃料を使用していることが必要条件となります。

4.安定的に発電することができる

バイオマス発電は、太陽光発電や風力発電などといった再生可能エネルギーと比較すると、より安定的に発電を継続することが可能です。天気の変化による直接的な影響を免れるからです。電力を利用する側としては、天気次第で供給がストップしてしまうようでは安心できません。

もちろん、バイオマス発電でも、何らかの特殊な理由でストップしてしまう可能性はゼロではありません。けれども、燃料さえ調達できればほぼ確実に発電ができるのが、バイオマス発電がもつ大きなメリットだといえます。

5.山村地域の活性化に繋がる

木質バイオマス発電を行うためには、かならず燃料となる木材が必要です。発電規模や発電方法、目的などによって最適な燃料はさまざまです。その中で、森林由来の間伐材を利用する場合は、その森林がある地域の活性化に貢献できる可能性があります。

地域の未利用資源を燃料として導入するわけですから、さまざまな雇用の創出につながります。間伐材の収集運搬、エネルギー供給および利用施設の運営、さらには新旧産業の活性化など、経済面における多数のプラス効果を見込めます。

木質バイオマスのデメリットとは?

押さえておくべきデメリットは、コストがかかるという点です。コストといってもいろいろありますが、主なものを2つ「初期費用」「燃料の調達コスト」についてご紹介します。

1.初期費用

化石燃料による発電から木質バイオマス発電へ変更するために必要となるボイラーを導入するには、高額な初期費用が必要になります。今後もエネルギー需要はあるとしても、何年間稼働を続ければ、利益を出し始めることが可能になるのか計算すると、なかなか厳しい数字が出るケースもあります。

2.燃料の調達コスト

独自のルートで廃材を入手できる場合、あるいは加工業者とのビジネス形態次第では、一般的な方法よりも安いコストでの燃料の調達ができるかもしれません。

けれども、実際は、スムーズな燃料の調達がなかなか難しく、どうしてもコストがかさんでしまう傾向にあります。特に、森林の未利用の間伐材を調達する場合、運搬輸送費がかさばってしまうようです。

3.燃焼温度が低い木質バイオマスは、発電だけでは効率が悪い

木質バイオマス発電は、複数存在する発電方法の中では、「発電効率」は低めです。ちなみに発電効率とは、あるエネルギーを電気エネルギーへと変換する際に、さまざまな理由で生じるエネルギーのロスの度合いのことです。

林野庁のホームページによると、木質バイオマス発電における発電効率は25%と、かなり低い数字になっています。つまり、もともとのエネルギーの75%分のロスがあることになります。これは、木質バイオマス燃料が燃える温度があまり高くならないことが大きな理由です。

4.木材資源の取り合いが懸念される

FIT(固定価格買い取り制度)では、木質バイオマスにより生産された電気の価格を高めに設定しています。そのため、木材の取り合い状態が生じてしまう可能性もゼロではありません。

もともと、木材は発電以外にもきわめて幅ひろい用途をもつ資源です。古くから、製紙や建材、木製家具などに用いられてきています。現在でもそれは同じです。本来別の目的で使う予定だった木材を、木質バイオマス発電の燃料へまわしてしまうなどの事態が懸念されます。

木質バイオマスのデメリットを抑える方法

木質バイオマスは、コスト面での問題が解決しない限り、導入に踏み出すのは現実的になかなか難しそうです。ですので、いかにデメリットを軽減し、多くの企業が木質バイオマス発電の導入を現実的に検討するかが重要。ここでは、実現するための方法や考え方などを紹介します。

自社で木材を調達できればコスト削減が可能

初期費用がかさんでしまうことは、避けられませんが、燃料用木材の調達コストに関しては、削減できるケースがあります。例えば、木材を利用した製品(例えば家具など)を製造する会社が、自社の工場で、余った木材を利用したバイオマス発電が可能です。

他社から木材を調達する仕組みと比較すると、コストはかなり抑えられます。また、木材を扱う業者との連携ができれば、中間マージンが発生しないなどのメリットを得られます。

地域に根ざしたライン形成

燃料として利用できる木材のひとつに、未利用の間伐材があげられます。日本全国を合せると資源は豊富ですが、多くの場合、森林に放置されたままになっているのが現状です。もちろん木質バイオマス発電に利用してもよいのですが、とにかく輸送費が高くついてしまうため、現状の「放置」という状態になっています。発電を行う場所までの運搬距離が長いだけでなく、道路の整備などがなかなか進んでいないエリアもあるため、再利用が難しいのです。

「放置されたままの木材」をどうにか活用する方法としては、地域ぐるみの連携をはかる必要があります。地域に根ざしたライン形成をして、間伐材の収集から運搬、加工、燃料としての利用まで、すべてをスムーズに行えるようにする方法です。そうすることで、地域内に新しい雇用を生み出し、地域経済の活性化にも貢献できる可能性があります。

バイオマス発電導入を検討する際は

メリットとデメリットをあわせもつバイオマス発電ですが、地球環境を大切に考えることを、より強く求められつつある時代です。コスト面を中心とした問題をクリアできるのであれば、温暖化の一因となってしまっている従来型の化石燃料による発電から、二酸化炭素を増やさない、エコにやさしいバイオマス発電に移行する意義は高いといえます。日本でも、バイオマス発電導入を検討している企業や導入した企業に対して、国が補助金や助成金の制度を適用するなど、サポート体制が整いつつある状況です。

ただ、燃料の調達方法や連携のためのビジネス契約の進め方次第では、廃棄物に関する法律などに抵触するリスクが生じる場合があります。ですので、導入を検討している方は、木質バイオマスのプロへの相談がおすすめ。そうすることで、よりよい結果・利益に近づけるはずです。

バイオマス燃料に使用される種類

バイオマス発電にはさまざまな種類の燃料が使用されます。燃料は木材のイメージが強いですが、実は燃料以外も使用されています。ここでは、とくにおさえておきたい4種類の燃料についてみていきましょう。

木材

バイオマス燃料ときいてまず思い浮かぶのは、おそらく、木材ではないでしょうか。建築廃材などをはじめとする木材の廃棄物や未利用の間伐材などが用いられます。それらをリサイクル工場でチップ化するなどの加工をほどこします。加工された木材燃料は、安定的に燃焼しやすいのが特徴です。

混合燃料【木材+石炭】

木材の燃料に、石炭を混合させて用いる方法です。石炭はカーボンニュートラルではないため、地球環境にはどよいとはいえませんが、大量の燃料確保などが難しい場合もある木質バイオマス発電の問題を解決してくれる側面もあります。既存の発電所をそのまま使えるのも、大きなメリットだといえます。これまでに、熱量の25%程度までは実証済みです。

木質バイオマス燃料発電事業をしたくても、設備や供給体制などの準備がなかなか進まないケースもあります。そんなとき、とりあえず発電をスタートさせたい場合などに、ひとつの選択肢になりうる燃料であることを理解しておきましょう。

パームヤシ殻

パームヤシの実から、パーム油を取り除き、残ったものが、いわゆるヤシの殻です。PKSとも呼ばれ、木質バイオマス発電の燃料として利用されています。パーム油を取り除いたとはいっても、まだいくらかの脂分が殻に残っているため、比較的効率よく燃焼させられるのが特徴です。国産の木材よりも安定的に、かつ低いコストで調達できる場合もあるため、注目をあつめている燃料です。

ただ、パームヤシの栽培自体が生物多様性に悪影響をおよぼしてしまうことや、パームヤシ殻を輸送する際に多量のCO2が排出されることなど、問題視されている点もいくつかあります。

廃油

廃油は毎日大量に発生しています。特に、レストランなどの外食産業で調理の際に発生する廃油は、たった1日で数百トンにおよびます。もったいないとはいっても、廃油をそのまま使うことはできません。なんとか発電の燃料として再利用できるようにするためには、精製を繰り返す必要があります。

下水汚泥や家畜糞尿など

木材ではなく、家畜糞尿などを燃料として発電を行う方法は「湿潤系バイオマス発電」とよばれます。燃料に用いられるのは、家畜糞尿だけでなく、発酵するとメタンガスを発生させるさまざまな物質です。生ゴミや下水を処理する際に生じる下水汚泥なども代表的な燃料です。そのため、湿潤系バイオマス発電を行うための設備がある下水処理場も存在します。

バイオマス発電の現状と今後の展望

バイオマス発電に、いくつかのクリアすべき問題点があるのは事実です。ただ、多くの可能性や周囲へのプラスの波及効果などを持っていることも同様に事実であると考えられます。だからこそ、国もサポート体制をしいているという現状があります。ここでは、バイオマス発電がもつ可能性や関連の法制度、さらに、問題点を確認しつつ、今後の展望などをみていきます。

バイオマス発電が持つ可能性

バイオマス発電がもつ大きなメリットのひとつが、天候などのコンディションに左右されにくいという特性です。太陽光発電や風力発電などといった他の再生エネルギーによる発電と比較すると、より安定的に電気の供給を行えるわけです。

さらに、木質バイオマス発電は地域の経済の活性化に貢献するのに適した方法の発電方法です。最も大きな理由としては、燃料として木材を使用するため、地域の林業と密接な関係を構築できるということがあげられます。他にも、燃料の運搬や、生産した電気や熱の利用方法によっては、地域産業の活性化、ひいては新たな雇用の創出に繋がります。

バイオマス発電がもつこれらの可能性を見込んで、平成28年度には、バイオマスエネルギー関連の事業に対して10億円を超える国の予算が割り当てられています。地方創生のさらなる促進を目指すという考え方です。

国によるサポート体制

補助金制度

バイオマス発電事業を推進するための国の予算がくまれただけでなく、バイオマス発電事業を導入する事業者のための制度も設けられました。これは、初期費用や運転コストがかなり高いといえるバイオマス発電事業の経済的負担を軽減し、導入を後押しするために補助金を給付する制度です。

固定価格買取制度(FIT)

バイオマスなどの再生可能エネルギーによって生産された電気を、電力会社が買い取るときの価格を定めている制度です。バイオマス発電の場合、価格は使用した燃料により異なりますが、バイオマス発電による電気には、比較的高い買取価格が設定されています。中でも、燃料に間伐材を利用した場合の電気の価格が最も高くなっています。

今後の展望における問題点

バイオマス発電が地域に与えるプラスの効果や、国によるバイオマス発電へのサポート体制があるのは確かです。けれども、他の発電方法と比較しても、「とにかくたくさんのコストがかかってしまう」というデメリットについては、まだ根本的な解決はされていません。バイオマス発電事業をサポートする国の取り組みも、無期限で継続されるとは言い切れないことも考慮する必要があります。

くりかえしになりますが、バイオマス発電は、コストの問題さえクリアできれば、地球環境にとってだけでなく、国内の地域経済にとっても、理想的な発電方法として認識されるようになるでしょう。

取材協力
バイオマスエナジー社の公式HPキャプチャ
引用元HP:バイオマスエナジー社公式HP
https://www.bme.co.jp/wp/

木を選ばない
唯一無二のプラントを持つ
バイオマスエナジー社

木を原料に温風や水蒸気、バイオマスガスといった新たなエネルギーとしてリサイクルする画期的手法が、木質バイオマス。しかし、これまでバイオマスを燃やすプラントには燃料の制限があり、使いたい木材に対応できないというものばかりでした。

そうしたなかで、どんな木でも燃やせるプラントを誕生させたのが、バイオマスエナジー社です。当サイトでは、唯一無二のプラントを持つバイオマスエナジー社(2019年7月現在)に取材協力を依頼。実際にどんなプラントなのか、そしてコスト削減はどれくらいか。現地取材しレポートにまとめたので、ぜひご覧ください。

コスト削減の切り札!?
木質バイオマスの
プラント見学レポを見る