バイオマス事業の将来性について

地球環境にやさしいカーボンニュートラルなバイオマス。バイオマス燃料を用いた発電事業は、近年、注目を集めつつあります。けれども、この事業の将来性を考慮したとき、解決すべき問題のは事実。このページでは、バイオマス事業の収益特性や地域との連携の重要性の観点から現状の問題をみていきます。

バイオマス事業が抱える問題点とは

廃棄物処理の状況を改善するためのひとつの方法として取り組まれてきた「バイオマスエネルギー事業」。けれども、その後、政府がFIT制度をスタートさせ、きちんと収益を出すことが見込める事業として認識されるようになりました。ただし、この制度は時限的なものであり、やがてはFIT制度の電気買取は終了するでしょう。

そのため、現段階からFIT制度への依存度を低くしていき、持続可能なバイオマス事業として確立させる必要があります。現在の状態のままでは、バイオマス事業単体での経済的な面における効果は大きくありません。そのため、地域社会にとって欠かせない存在の事業へと成長していくことが長期的に持続させるための条件だといえます。

収益を出し続けるための事業構造

バイオマスエネルギー事業を将来性のあるものとするためには、事業の収益特性を理解しておきたいところです。本サイトでは木質系のバイオマスを主軸に扱っていますが、木質バイオマスの収益のしくみをより本質的に理解するためにも、もう一方の湿潤バイオマスについての収益特性について説明していきます。同じバイオマスエネルギー事業に属しているわけですから、比較しつつ特性の違いを確認してください。

木質系バイオマス事業の場合

電力生産コストが高い

現行のFIT制度に大きく依存している面が否めません。その最も大きな理由は、コストの高さです。それに加えて、燃料を大量に調達するのが難しいといった問題もあります。そのため、バイオマス発電の場合、調達コストだけで石炭火力発電のトータルのコストを上回ってしまう場合すらあります。

コストを少しでも抑えて運転するために有効なのは、発電効率をアップさせることです。基本的には、発電規模が大きくなっていくにつれ発電効率がアップするため、おのずと発電にかかるコストが下がっていくわけです。そのためには、先述のとおり、燃料の大量調達を安定的にかつスムーズに行えることが前提となります。

バイオマス発電の規模とコスト

ここで、発電規模と発電効率の関係がどのようになっているのか、数字でみていきましょう。ある試算モデルでは、発電規模が1,500キロワットの場合、発電効率は16%です。一方、発電規模が5700キロワットの場合、発電効率は23%まで上昇します。「発電効率が低い=発電コストが高い」という関係が成り立つので、前者の場合はよりコストがかかっていることになります。

湿潤系バイオマス事業の場合

木質系バイオマスとの違い

木質系バイオマスが基本的に木材由来であるのに対し、湿潤系バイオマスは畜産農業由来です。収益も、木質系が電力の販売によるものであるのに対し、湿潤系(のメタン発酵事業)では廃棄物処理自体が多くを占めています。後者の場合もエネルギー販売によって収益をあげてはいますが、かならずしもメインではありません。

木質系バイオマス事業と湿潤系バイオマス事業とでは、収益特性が対照的であることがわかります。FIT制度の影響で売電事業に以前よりは力を入れるようにはなったものの、湿潤系バイオマス事業の主な社会的役割といえるのは、「廃棄物処理」のほうです。

湿潤系バイオマス事業の支出と収入

湿潤系バイオマス事業における発電でも、規模が大きくなればなるほど、収入も増加していきます。支出は穏やかな増加のみ。そのため、廃棄物処理などをメインとする事業内容であれば、十分にビジネスとして成立する収益を見込めます。

また、湿潤系バイオマスの機能である廃棄物処理機能は、地域にとって持続的に必要であるため、FIT制度の有無に関わらず事業成立するように計画することが重要となります。

廃棄物処理は、地域において、当然これからも必要不可欠。長期的かつ持続的な需要があるといえるわけです。そのため、FITの有無にあまり左右されることなく、社会的役割を中心にすえてビジネスを構築していけるかどうかが成功のカギとなります。

地域との連携の重要性

木質バイオマス事業をビジネスとして成立させるためには、やはり単体としてではなく、地域との連携が必要不可欠。まずは地域社会、そして地域の産業との信頼関係をきずくことが大切です。信頼関係があれば、地域産業と上手に連携をはかり、協力体制を築けるはずです

そうすることで、木質バイオマス事業で問題となりがちな「安定的な燃料調達方法」や「燃料調達のコスト」の改善も期待できます。さらに、生産したエネルギーの供給先の創出も比較的スムーズになるでしょう。地域との協力体制のもと、バイオマス事業の将来性や発展の可能性を感じられるようになり、力の入れようもさらにかわってきます。

将来性のある木質系バイオマス事業とは

協力体制をはかるために必要な検討

木質系バイオマス事業について、事業者と地域が合意形成を進める中で、きちんと検討すべきポイントは大きく分けて2つあります。

ひとつは、「地域内にある森林を将来的にどのように取り扱うのか」という問題です。両者が森林の現状に関して共通の認識をもった上で、今後の素材生産量や素材生産費用などの移り変わりなどの分析を行うことは、ビジネスを行う際には大変重要です。

もうひとつは、「地域における産業のあり方」です。産業の現状を理解し、と今後のあり方が定まれば、将来のビジネス展開についての議論を進められるようになります。どのくらいの熱需要が見込まれるか、あるいは木材資源の出荷先の創出や選択など、議論すべきことはたくさんあります。

具体例

比較的高級な木材加工製品を地域産業として力をいれていく場合を考えてみましょう。まず予想されるのが、効率性を重視した工場の大規模化です。また、バイオマス発電事業も、工場の規模の変化に沿って乾燥熱などの需要拡大を検討されます。こういった流れを考えると、事業者と地域内の他の複数の事業や産業との密接な連携の重要性がより一層強く実感されます。

取材協力
バイオマスエナジー社の公式HPキャプチャ
引用元HP:バイオマスエナジー社公式HP
https://www.bme.co.jp/wp/

木を選ばない
唯一無二のプラントを持つ
バイオマスエナジー社

木を原料に温風や水蒸気、バイオマスガスといった新たなエネルギーとしてリサイクルする画期的手法が、木質バイオマス。しかし、これまでバイオマスを燃やすプラントには燃料の制限があり、使いたい木材に対応できないというものばかりでした。

そうしたなかで、どんな木でも燃やせるプラントを誕生させたのが、バイオマスエナジー社です。当サイトでは、唯一無二のプラントを持つバイオマスエナジー社(2019年7月現在)に取材協力を依頼。実際にどんなプラントなのか、そしてコスト削減はどれくらいか。現地取材しレポートにまとめたので、ぜひご覧ください。

コスト削減の切り札!?
木質バイオマスの
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