木質バイオマスのプラント見学レポート

「木材リサイクルの救世主って、どんなプラントなんだ?」

6月某日、当サイトを立ち上げた木質バイオマス研究会に属する私は、長崎県諫早市に向かった。バイオマスエナジー社が手掛けた木質バイオマスのバイオマスボイラーとガス化設備を見学するためだ。

バイオマスエナジー社とは、再生エネルギーの活用推進と地域エネルギーの創生への寄与を目指しており、木材ならなんでも燃焼できるという唯一無二の国産バイオマスプラントを提供している目下注目の企業だ。

プラントは他社も出しているが、「木ならなんでも燃やせる」のは、バイオマスエナジーの1社のみ(2019年7月現在/当サイト調べ)。実際にどんなバイオマスプラントなのか、現地取材から全貌に迫る。

いざ、なんでも燃やせる木質バイオマスの
プラント見学へ

バイオマスエナジー社プラント入口バイオマスエナジー社のプラント入口

先方の担当者と合流し、郊外にある技術開発センターへ。現地に着いてプラントを見た第一印象は、「意外とコンパクト」。もうひとつ意外だったのは、施設内の温度だ。なにかを燃やす施設=熱気がすごいと思い込んでいたので、そこまで暑くなかったことも驚きだった。これからどんなものが拝めるのかというワクワク感とともに、施設内の奥へ進んでいく。

緻密な計算が
安定稼働を生み出す

バイオマスエナジー社プラントのホッパー原料を入れるホッパー。右が熱利用、左がガス化

まずは、木材の原料を入れる供給機(ホッパー)を見学。ホッパーは2つあり、それぞれ「熱利用用」「ガス化用」。ちなみに入れる原料や量に合わせて、ホッパーの大きさは変えられるそうだ。

前述のとおり、木質ならなんでも対応可能なうえ、原料の推奨サイズは8mmアンダー。この数値以下に粉砕されていれば、問題なく稼働しつづけるという意味だ。ちなみに他社ではA1ペレット(最高水準)や30~50mmなど、原料の質やサイズ幅が厳密に定められている。それを考えれば、燃料のサイズ制限がかなり少ないため、原料の下準備が楽と言える。

熱利用する場合、燃焼用の空気は横から注入。なぜそうするかは、紛体原料の効率的拡散燃焼を行ない高温の熱ガスを作るため。非対応の燃料が混入したり、想定外の不具合で稼働がストップしたプラントも多いと聞く。そんな繊細な機械ながら、バイオマスエナジー社のそれが問題なく稼働しているのは、こうした緻密な計算のうえで成り立っているからだと感じた瞬間だ。

難敵「クリンカー」処理の
手間がグッと軽減

クリンカーの写真実際のクリンカー。固まってからでは処理できないと感じるほど硬い

木材の燃焼時に気になるポイントが発生する灰であり、冷やすと固まるクリンカーの処理だろう。バイオマスエナジー社では、そこにどうアプローチしているのか。その答えは、バイオマス燃焼炉にあった。

バイオマス燃焼炉内に特別なシステムを用いているそうだ。他社のプラントと一線を画す重要事項のため詳細は載せられないが、考え方としては「クリンカーは出て当たり前。だから出ないようにするのではなく、どう回収しやすくするかを考えて設計した」のだという。

効率重視で
燃焼ロスは数%

バイオマスエナジー社プラントのクリンカー処理機械この機械が動いて灰を押し出す仕組み

実際にクリンカーを処理するのは、プッシャー装置と空気搬送を組み合わせた回収装置。処理の時間は原料の状態によって変えられるそうで、たとえば樹皮(バーク)なら15分に1回、もみ殻なら5分に1回など。最速で1分に1回は可能とのこと。どんな木質でも燃やせるからこその、フレキシブルさ。

こうして定期的に処理を行なえるからこそだろう。クリンカーや灰の処理における燃焼ロスは、数%だそうだ。以前に他のバイオマスプラントを取材した際、メンテナンスにおける機械停止時に冷えると発生するクリンカーの処理に多くの時間がかかってしまって、燃焼ロスが大きいと聞いた。それと比べると、バイオマスエナジー社のプラント、恐るべし稼働効率…!

約2,880万円分の
コストカット効果

バイオマスエナジー社のプラントの反応炉反応炉。中には反応管が3つ

ガスの生成には蒸気がひとつのカギになるが、蒸気は排ガスを熱回収して熱交換し、蒸気温度を600℃ほどにして、反応炉の下から供給する仕組みが整っている。

無駄を省いたそのスムーズな流れによって高くなるのが、生成ガスのカロリーだ。燃焼熱量は2,500kcal/Nm³で、化石燃料の代替として活用すれば、重油換算で年間300㎘の削減になるそう。重油1ℓの平均価格96円(2019年7月現在)で計算してみると、約2,880万円のコスト削減だ。

必要最小限のメンテで
劣化を防止

バイオマスエナジー社のプラント写真サイクロンでスラッジを落とす工程も

ちなみに蒸気を生成する熱交換器は、とてもデリケートな代物。発生する塩素やマグネシウムの影響で、中を走っているパイプが傷んでしまうからだ。しかし、その問題もクリアしているのが、バイオマスエナジー社だ。反応水を浄化する浄水器が熱交換器内に搭載されており、劣化を防止。配管腐食対策も万全だ。フィルターの交換も、1年に1回で問題ないとのこと。

エコを生み出す施設は
処理水すらエコだった

水これが実際の処理水。飲み水にできそうな感じ。

燃焼された排ガスは、空気予熱器へ。ここで空気と熱交換させて200℃ほどのガスへ転換。そこから排熱用のボイラーへと流れていくと、お湯や木材の乾燥の用途として使えるようになる。

バイオマスエナジー社プラントのガス化でもうひとつ見逃せないのが、サイクロンと循環水処理装置だ。スラッジやタールなどを除去してきれいなガスにするとともに、ガスを冷やすための重要機器。とくに循環水処理装置にはこだわったそうで、きれいな水になるまでに、費やした時間は4年。工場排水として棄てられる水準にしなければならないからだ。実際に、出てくる水の透明さには心底驚かされた(写真参照)。

2秒に1回のデータ蓄積で、最適な生産性を維持

バイオマスエナジー社プラントの熱ガス炉熱ガス炉の写真。中の温度は1000度以上

裏手に回ってみると、プラントのデータ室があった。モニターは1秒に1回、記録は2秒に1回、プラントのログをとっているそうで、エラーが出るとすぐにわかる仕組み。各機器の温度や圧力といった数値を常に検証しながら、最適なガス化生成ガスを発生させる状態を保っているのだ。

“透明な煙”も
エコ施設の誇り

バイオマスエナジー社プラントの煙突煙突からの煙は目視できず

最後に案内されたのは、排気の煙突。なにかを燃やすと、煙突からもくもくと煙が上がる。私のそんなイメージは一瞬で覆された。煙が一切見えないのだ。もちろん、視力が低下したわけではない。とにかく排気がクリーンという証明である。

「1000℃以上の高温燃焼の技術によるもの」。担当者のその答えが、バイオマスエナジー社の細部に至るまでの徹底ぶりを垣間見せてくれた気がした。

  • プラント見学を
    終えてみて…

    なんでも燃やせるのに地球に優しいプラント

    バイオマスエナジー社のプラントとボイラー及び熱交換器を組み合わせることにより、水蒸気・温水・温風・ガスの利用が可能。こうした多様な活用法は、さまざまな場面でソリューションになるはず。

    バイオマスエナジー社のプラントには、会長や社長をはじめ、すべて社員の努力が凝縮されている。事実、バークや剪定枝といった灰分が多い木材も問題なく燃焼させるとともに、2500kcalという高いエネルギーを安定して生成できるバイオマスプラントは、他にはない(2019年7月現在/当サイト調べ)。プラントの質の高さとかかわる社員の情熱。それを存分に感じられた1日だった。

    ちなみに、バイオマスプラント設置の標準的な設備費は、7,000万円~1億2,000万円。たとえば製材時に発生する廃材の年間廃棄コストに1,500万円(10キロ150円計算)をかけているとすれば、単純計算にはなるものの、約4年~8年でペイ可能だ。

    木質バイオマスは導入コストこそかかるものの、熱利用や発電などの用途に使えるうえ、地球温暖化対策にもなるなど、それを補って余りあるメリットを持っている。

    プラントイメージ画像
    プラントイメージ画像

バイオマスエナジー社とは

長崎の諫早市にあるバイオマスエナジー社は2006年に設立され、エネルギーの地産地消に積極的に取り組んでいます。バイオマスの活用で、プラントの導入実績も豊富。現在、ベトナムやオーストラリア、シンガポールなどで稼働しています。

バイオマスエナジー社のプラント情報まとめ

バイオマスエナジー社のプラント図
バイオマスエナジー社のプラント全体図

使用する原料を選ばない

従来のバイオマスプラントでは使用できなかったバイオマス廃棄物等の受け入れが可能

約3,000万円のコスト削減効果も

バイオマス燃料のみで1000度を超える高温燃焼による高い燃焼効率を実現。化石燃料の代替として活用すれば、重油換算で年間300㎘、約2,880万円の削減に(重油1ℓの平均価格96円で計算)。

燃焼ロスが少ない
画期的な処理方法

高灰分のバイオマスの灰処理を連続で自動処理。融点の低い灰、クリンカーになりやすい原料にも使用することが可能

安全で制御しやすいシステム

原料供給量と空気量は自動調整のため、熱風温度の管理が容易。全自動運転のため、木質原料補給の他には人員不要

ニーズに応じたアウトプット

バイオマス燃焼炉で発生させる熱をニーズに合わせた熱利用機器と組み合わせることで、バイオマスから高温水蒸気・温水・乾燥用温風・ガス利用といったさまざまなアウトプットを利用可能

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