固定価格買取制度(FIT制度)とは?

再生可能エネルギーによる発電と関わりのある「固定価格買取制度」とは何でしょうか。制度の概要とその目的やメリット、注意点について詳しく解説します。

固定価格買取(FIT)制度とは

固定価格買取制度は、FIT制度(Feed-in Tariff)とも呼ばれ、再生可能エネルギーの普及に重要な役割を担っています。どのような制度なのかを確認しましょう。

再生可能エネルギー電力の買取制度

固定価格買取制度とは、「再生可能エネルギー」によって発電された電力を、買取開始から一定期間「固定」された価格で、電気事業者が買取ることを定める制度です。

再生可能エネルギーには、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス」の5つが該当します。電力の買取価格が、国によって定められた基準によってあらかじめ固定され、それは10年や20年などの一定期間が満了するまで変わりません。

これは「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(FIT法)に基づき、2012年7月に始まった制度です。それまでは類似の制度として太陽光発電の「余剰電力買取制度」がありましたが、今ではこのFIT法に置き換わりました。

再生可能エネルギー普及のための制度

固定価格買取制度は、再生可能エネルギーによる電力供給を促進するための制度です。再生可能エネルギーは、石油などの「再生不可能エネルギー」からの転換や、CO2削減に役立つものとして、利用促進が望まれています。

しかし再生可能エネルギーによって電力を生み出す設備を建設し、維持するためには大きなコストがかかるため、普及しにくいという現実がありました。一定期間「固定」された価格で買取ってもらえる保証があれば、多くの事業者が再生可能エネルギー分野に参入しやすくなります。

固定価格買取制度は、発電事業者にとって有利な条件をつくり、再生可能エネルギーを普及させるという重要な役割を担っているのです。

FIT対象のエネルギーと調達期間

FIT制度によって、固定価格で買取ってもらえる期間のことを「調達期間」といいます。固定価格買取制度の対象となっているエネルギーは、次の5つです。それぞれの概要と調達期間を確認しましょう。

「太陽光」10年か20年

太陽光発電パネルは、小型のタイプなら一般家庭の屋根の上にも設置できることから、家庭でもFITを利用した電力販売を行っているケースが多くあります。価格が固定される期間は、10kW以上の発電設備なら20年間、10kW未満の小規模な太陽光発電の場合は10年間です。

「風力」20年

風の力で風車を回して発電する風力発電には広い土地が必要ですが、大規模に設置することで、低コストで効率的に発電できます。陸上だけでなく、海上に浮かべて設置することも可能です。調達期間は20年に設定されています。

「水力」20年

水力発電は、水が落下する際のエネルギーを利用して発電するシステムです。農業用の水路を利用した小規模なタイプや、上水道施設を利用したものもあります。どのタイプでも、FITの調達期間は20年です。

「地熱」15年

地熱発電は、火山などに由来する地下の熱エネルギーを利用してタービンを回し、発電する仕組みです。安定して発電できますが、設備を造るのに10年ほど必要で、初期費用が大きくかかります。調達期間は15年です。

「バイオマス」20年

バイオマス発電では、木質ペレットや食料廃棄物など、さまざまな生物資源をエネルギーとして利用します。小型の発電機から大規模な発電所まで複数タイプがありますが、調達期間は全て20年です。

FITのメリットと注意点

再生エネルギーによる発電を行う事業者にとって、固定価格買取制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。注意点と共に解説します。

長期的な買取が保証される

固定価格買取制度のメリットは、買取価格が長期間保証されることによって、長期的な収益の計算がしやすいことです。事業者にとって、「買取相場が変動してしまう可能性」などの不安定な要素は、経営判断や計画を難しくする要因の一つ。その不安定要素を取り除き、長期的な計画が立てやすくなるのは、事業者にとって大きなメリットといえます。

「固定価格=完全な安定収益」ではない

固定価格買取制度によって買取価格が長期間保証されているからといって、「完全に安定した収益」が保証されているわけではありません。

安定した収益を得るには、「安定して発電できる」ことが前提です。発電量が減少すれば、その分、収益も減ってしまいます。より安定した収益を出し続けるためにも、「燃料の安定供給」や「発電施設の維持管理」など、複数の要素が収益に影響を与えることを、あらかじめ計算しましょう。

期間満了のことも考えておく

固定価格買取制度の期間には、必ず満了が訪れます。10年や20年などの調達期間が満了した後、どのように行動するのか考えることが大切です

これは、「2019年問題」では、その点が浮き彫りになりました。2019年問題とは、固定価格買取制度の前身である「余剰電力買取制度」の開始からちょうど10年にあたる2019年に、35~40万件ほどの設備が期間満了を迎える問題でした。

期間が満了した後は、「固定価格」ではなくなるので、買手となる電力会社が自由に設定した価格で電力を買い取ります。つまり買取価格が変動し、収益に影響する可能性があるのです。期間満了後には買取価格が変動することも考慮し、長期的な事業計画を立てましょう。

FITは「再エネ賦課金」によって支えられている

固定価格買取制度は、電気の利用者から徴収する「再エネ賦課金」によって支えられています。再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)は、全ての電気利用者に対して、電気料金に上乗せされて請求されているものです。

こうして集められた再エネ賦課金は、電力会社が再生エネルギーによる電力を買い取るために使用されます。再生可能エネルギーによって発電された電力は、各家庭に供給される電力の一部ですから、それを利用した分の料金として、再エネ賦課金を支払っていることになります。

FITを活用しながら長期的な計画を

固定価格買取制度は、発電事業者をサポートし、再生可能エネルギーを普及させるために重要な制度です。とはいえこの制度によって、発電事業者の安定した収益が完全に保証されるわけではありません。

期間満了後のことも考えて、この制度に依存しすぎない計画を立てることが重要といえます。

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