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木質バイオマス発電は林業にとってプラスに働くのか?

木質バイオマス発電では、材木として使用できないような木を燃料として使用します。捨てるはずのものを燃料として販売できるので、林業の利益につながることが期待されますが、実際はどうなのでしょうか。林業に与える影響について考察してみましょう。

そもそも木質バイオマス発電とは?

木質バイオマス発電は、再生可能エネルギー「バイオマス」による発電技術の一種のこと。バイオマスとは「バイオ(生物)」と「マス(質量)」という二つの単語を合わせたもので、生物由来の資源や燃料を指して用いられる言葉です。

木質バイオマスは、粉砕した木を成形した「木質ペレット」や「薪」などのことですが、他にも「燃料用に栽培された穀物」や、「廃棄食品」などのバイオマスがあります。

木質バイオマス発電では、木質ペレットなどを燃やしたエネルギーでタービンを回し、電気を発生させます。つまり火力発電の一種でもあります。従来の火力発電では石油などの「再生不可能エネルギー」を使用しているため、石油資源が将来的に枯渇するリスクや、CO2排出などの問題がありました。

長い年月が経過しないと生まれない石油などの「化石燃料」よりも、はるかに短期間で作ることができる木質バイオマスなどの「再生可能エネルギー」は、環境問題を改善するために注目されているのです。

林業にとってプラスになるのか

木質バイオマス燃料の確保には、林業が密接に関係しています。木質バイオマス発電は、林業にとってプラスに働くのでしょうか。詳しく考察してみましょう。

廃棄物を有効活用できる

木質バイオマス発電が普及することは、林業で発生する廃棄物の有効活用につながるというメリットがあります。本来は捨てるはずのものが、燃料として販売できる「商品」に変わることになり、林業にとってプラスに働くことが期待できるのです。

林業の現場では、廃棄物として多くの木が無駄になっているという現実があります。

一例として「間伐材」が挙げられます。木の成長を促すための間引き作業である「間伐」によって発生する間伐材は、材木として使用されることもありますが、「捨て間伐」として廃棄されるものも多いのが実情です。

他にも、丸太を作る際に発生する屑である「林地残材」や、丸太を材木として製材する過程で発生する「端材」や「おが屑」などが、林業における廃棄物として挙げられます。

このような捨ててしまうような木材でも、細かく粉砕して木質バイオマスに加工すれば貴重なエネルギー資源になります。木質バイオマス工場に対して資源を販売することで、林業に新たな利益をもたらすことが期待されているのです。

山村地域の経済活性化に期待

木質バイオマス発電の導入が進み、社会に浸透することで、林業の現場の中心である山村地域が活性化することも期待されています。

山村地域に木質バイオマス工場や発電所が建設されるということは、そこに雇用機会が生まれるということ。「燃料を集める」という新たな仕事が生まれることで、林業に従事する人が増える可能性もあります。木質バイオマスは、山村地域の経済を活性化させ、林業にとってプラスとなる可能性を秘めているのです。

コストが余計にかかる場合もある

木質バイオマスが林業にマイナスの影響を与えるとすれば、「余計なコストがかかる」場合があるという点です。木質バイオマス工場に売るための木材を集めたり、保管したりするには、ある程度の費用や人件コストがかかります。

しかし、集める作業に時間がかかって、本来の林業に悪影響が出ることも。人手不足の状態では、そこまで手が回らないという場合もあるでしょう。本来は木材として販売できるようなものも燃料にするような流れになると、林業の本来の仕事に悪影響を与えかねません。

木質バイオマスによるメリットを最大化するために、人材を適切に供給し、燃料を集める作業を効率的に行える仕組みをつくる必要があるのです。

木質バイオマス発電にとって重要なこと

木質バイオマス発電が林業にとってプラスに影響するためには、それが浸透し、安定して稼働することが必要です。そのために重要なポイントが二つあります。

燃料を安定して確保する

木質バイオマス発電は、太陽光発電や風力発電など他の再生可能エネルギーとは違い、燃料を積極的に集め、安定して供給する必要があります。

燃料を確保する体制が安定していないと、余計なコストがかかり、発電するためのトータルコストが増える可能性があるのです。また木の成長には、ある程度の時間がかかります。材料となる木材の供給が追い付かなくなり、燃料の供給が滞ると、木質バイオマス発電所が安定して稼働できなくなってしまいます。

なるべくコストを抑えながら、継続的に燃料を確保できるような体制をつくる必要があるのです。

熱活用についても考える

木質バイオマス発電所で発生する熱を、発電以外のことにも使う「熱活用」について考えることが重要です。

火力発電である木質バイオマス発電は、その過程で熱エネルギーを発生させます。そのエネルギーの「一部」を電力に変換して発電しますが、熱エネルギーの70~80%ほどは失われてしまうのです。この熱を何かに利用し、エネルギーの無駄を減らすことを考えるのが「熱活用」です。既にさまざまな発電所で、熱活用のアイデアが実践されています。

例えば、熱を利用してお湯を作り「温浴施設」などで利用するというアイデアです。魅力があって集客力のある温浴施設ならば、安定した運営が期待できます。

また熱を利用して「作物を栽培する」ことも有効な活用方法です。ハウス栽培など、暖房が必要になる作物を育てるための熱源として、発電所の熱を利用できます。

熱活用を考えることが、発電所の安定した運営に役立ち、林業にも良い影響を与えるでしょう。

取材協力
バイオマスエナジー社の公式HPキャプチャ
引用元HP:バイオマスエナジー社公式HP
https://www.bme.co.jp/wp/

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